サラダのサブスク「サラスク」

2020/09/27 14:05

サラドの商品が皆様のもとへ旅立つ出発地点、千葉県多古町。


2019年より、サラドが商品開発から製造までお世話になっている、
株式会社農(みのり)さんの工場にお邪魔しました。



私たちを出迎えてくれたのは、8月の陽射しにきらきらと輝く田園。
そして工場に入ると、天井の吹き抜けの窓からは青空が覗き、隣には栗山川が穏やかに流れ…
想像していた "食品製造工場" とは少し違った、和やかで温かい雰囲気の現場でした。

現場では野菜をカットする機械に入れる前に、必ず手作業でチェックしているとのこと。
虫食いや傷んだ部分などは、人の目でしか確認することができないんだそうです。



詳しい工場見学の様子は、後編でもお伝えしたいと思います!

工場内を見学させていただいたあと、株式会社農のお二人にお話を伺いました。
1人目は、バングラディシュから留学生として来日し、株式会社「農」の代表取締役を務めるミヤ・マムンさん。
そして2人目は、5つ星大手外資系ホテル出身で、サラドのメニュー開発を担当してくださっているシェフの増渕修一さん。

前編ではミヤ・マムンさんの起業のきっかけや、経営者から見た日本の農業の課題についてご紹介します。



ーミヤさんは学生時代、日本で経営を勉強されていたと伺いました。
日本への留学を決めた理由はなんですか?
もともとバングラディシュの実家が、日本の車の部品やタイヤを輸入・販売している会社だったんです。子供の頃から日本人が家を訪ねてくることも多くて、その頃から日本に興味があったことは確かですね。
大学を卒業後、文部科学省の大きな奨学金があって、2年くらい日本で勉強してみるのもありだなと思って留学を決めました。

ーその頃から “農業” や “食” には興味があったんですか?
留学中、隣の街で農業をやってる方と知り合ったんです。彼から誘ってもらったことが、農業に携わるきっかけになりました。彼の会社で養鶏や畑、田んぼなどを経験し、2年勤めたのちに独立を決めました。

ー独立を考えたきっかけは何だったんですか?
当時勤めていた会社では、”仕事に無理と無駄が多い” と感じていました。
従業員が57人いたんですが、全員が無理の多い仕事をしているように見えて。だけど無理をしているのにも関わらず、ロスはかなりの量。
私は働きながら、日本の同業者の8〜9割が同じなのではないかと考え始めたんです。
”無理と無駄を省いて、何か新しい事業を起こしたい” という気持ちで独立を決めました。

ーミヤさんにとって、株式会社農が他の会社と異なる点はどこだと思いますか?
地元の農産物にこだわっているところですね。それと生産から販売加工、お客さまに届くまでをひとつの会社でやっているのも、うちの会社ならではだと思います。
私たちの仕事は、農家さんが生産したものに付加価値をつけること。
つまり農家さんが良い状態でなければ、自分たちにも良い風が吹いてこないんです。だから地元の農家さんに、少しでも興味持ってもらうことが大切ですよね。
そこでポイントになるのはやっぱり利益。彼らの利益を確実に上げていかなければ、我々に興味を持ってくれないですし、それはつまり自分たちの首を絞めることにもなる。
農家さんたちに気持ちよく生産していただくことを、何よりも大切にしています。



ーミヤさんは多古町で、国際協力日本語学院という語学学校も設立されています。
プログラムの一環に農業体験がありますが、若い世代の人たちに農業を知って欲しいという想いからですか?
いえ、理由はそれだけではないんです。
国際協力日本語学院へ学びに来る学生のほとんどが東南アジアの子なんですが、東南アジアでは農業=貧しいっていうイメージが強く根付いているんですよね。
国自体に元気がないこともありますが、何より農家のこと大事にしていない。日本に来る留学生のうち、100人に1人も "農業をやりたい" っていう人がいないんです。
でも自分自身がバングラディシュ出身と言うと、関心を持ってくれる子がいて。
”あ、自分も頑張ればこんな風になれるのかもしれない!” っていう気持ちを持ってくれるかもしれないじゃないですか。
農業は決して貧しい人のやる仕事ではないんです。”朝から晩まで自分が生きられるのは、農家さんのおかげなんだ” ということを、彼らにも分かって欲しかったんです。

ー日本の若い人々が農業に関心を持つためには、何が必要だと思いますか?
実は、日本の農業も破綻の一歩手前だと思っています。なぜなら後継者がいない。
やっぱり若い人が興味を引くには、「面白い・楽しい・儲かる」ことが必要ですよね。
現在農家1人あたりの給料は、時給に換算すると300円と言われています。持ち家に住み、自分の畑でとれた物を食べて、なんとか成り立っている。もちろん休暇なんてありませんよね。
もっと誰もが挑戦しやすいように、システム化していくべきだと思うんです。
例えば生産する前に、それを買ってくれる人がいる状態を整えておくとか。それから、生産者が値段を自由に決められるような仕組みづくりも必要ですね。
自分で作った商品の価格を決められないなんて、想像がつかないかもしれないですね。
でも実際に、現在野菜の価格の多くは農協や大きな市場によって決められてしまっているんです。



ー今後私たちは持続可能な食事を広く提案していきたいと思っています。
すごく良いと思いますし、是非一緒にやらせていただきたいです。これからの未来に可能性を感じる事業です。
実は今、お米のもみ殻を主原料とした食器の製造に挑戦しています。
もみ殻は稲作に伴う農業廃棄物で、焼却処理されてきたものでした。ですがこれらのもみ殻を粉末状にして、でん粉と水を混ぜて成形したこの製品は、土に埋め戻すと90日前後で分解され、肥料として再利用できるんです。
農家の無駄をなくす取り組みとして、こういった形から少しでも力になっていきたいです。